『「TENET テネット」ネタバレ解説6 逆行弾による傷の問題、キャットの負傷の問題、爆発凍結の謎』 この記事は、「TENET テネット ネタバレ解説1」「TENET テネット ネタバレ解説2」「TENET テネット ネタバレ解説3」「TENET テネット ネ… ameblo.jp クリストファー・ノーラン監督の最新作『tenet テネット』(以下tenet)を観ました。ノーラン監督はこれまで『メメント』や『インセプション』、『インターステラー』で時系列の入れ替えや時間の拡張や超越を描いており、いわば時間をテーマとした映画のエキスパートです。 映画の感想ブログです。基本的にその映画が観たくなるように、ということを意識して記事を書きたいと思っています。, なんども書きますが、独自解釈です! 公式なものとは違っている場合があります。ご了承ください。, 名もなき男がアルゴリズムを入手してから、逆行するセイターと渡り合い、自身も逆行に転じて、同じカーチェイスをもう一度視点を変えて繰り返すまで。, この一連の流れは非常に複雑で入り組んでいるので、それぞれの視点ごとに、順を追って辿って行きたいと思います。, 数字は順行での時間の流れです。同じ数字は同じ時刻を意味しています。赤い数字は順行の流れ、青い数字は逆行の流れです。, まず、セイターとキャットとボルコフが、ベンツでタリンのフリーポートにやって来ます。, そのとき、キャットはアウディが待機しているのを見ます。そのドライバーはマスクをつけています。, セイターはキャットに「オスロで回収したものを見せる」と言いますが、倉庫に並べられていたのは銃器です。, キャットは名もなき男にもらった銃をセイターに向けますが、反撃され、蹴り倒され、容赦無く蹴りを入れられます。, セイターは回転ドアのある赤い部屋に入り、「逐一報告すること」を部下に指示し、自身は赤い部屋に閉じこもります。, 1:名もなき男とニールは、はしご車を使って輸送車からケースを奪取します。BMWのサイドミラーは壊れています。, 2:名もなき男とニールはBMWを先へと走らせます。名もなき男はケースを開けて中のアルゴリズムを取り出し、「なんだこの形状は」と疑います。ニールは「それが狙いのものだ」と言います。, 3:名もなき男とニールは無線を傍受し、意味不明の言葉を聞きます。「言葉がさかさまになってる」とニールは言います。, 5:アウディはすれ違いざまにBMWのサイドミラーにぶつかり、壊れていたミラーは元に戻ります。アウディはBMWの後ろにぴったり付き、後ろ向きに追いかけて来ます。, 6:アウディはBMWの隣に並走し、窓が開きます。アウディの後部座席にはセイター(逆行)がいて、キャットに銃を突きつけています。, 8:前向きのBMW、後ろ向きのSAAB、後ろ向きのアウディが横に並んで並走します。, 9:名もなき男はケースを投げ、ケースはSAABのボンネットを超えて、アウディに渡されます。, (このとき、名もなき男はケースの中身のアルゴリズムをSAABに投げ込んでいますが、この視点ではそれはわかりません。), 10:ベンツが近づいて来て、セイター(逆行)とアウディのドライバー(逆行)は、アウディからベンツへ乗り移ります。, 11:キャットだけが走り続けるアウディに残され、名もなき男はアウディに乗り移り、危ないところでブレーキをかけてキャットを救います。, 12:渋滞を前に、BMWとアウディが停まったところで、セイターの部下たちがやって来て、銃撃戦になります。ニールは「応援部隊」を呼びます。, 14:ベンツが来て、セイター(逆行)はBMWのグローブボックスを探り、そこに何もないことを知ります。, 15:名もなき男は港のフリーポートに連れて行かれます。柵の向こうでは、キャットがセイター(逆行)に連行されています。, 16:名もなき男は赤い部屋に連れ込まれ、ガラス窓に向かわされます。ガラス窓には銃弾の穴があります。, 17:ガラス窓の向こうの青い部屋に、セイター(逆行)が、マスクをつけたキャットを連れ込みます。セイター(逆行)は途中でマスクを外します。, 18:セイター(逆行)は「ケースはBMWか?」と聞き、その声は逆回転で再生され、名もなき男には聞こえます。, 19:セイター(逆行)は3、2、1とカウントダウンし、キャットを窓に押し付け、逆行弾を回収します。銃弾はキャットの腹を貫通します。セイター(逆行)は「次は頭だ」と脅します。, 21:赤い部屋にセイター(順行)がやって来て、「どっちだ、早く言え」と聞きます。名もなき男は「もう言った」と言います。, 23:セイター(順行)は回転ドアに入り、セイター(逆行)も後ろ向きに回転ドアに入ります。, 24:セイターたちが過去に消えたことを確認し、アイブスらの部隊はキャットを介抱します。ニールは名もなき男にアイブスを紹介し、「プリヤの部隊だ」と言います。, 25:キャットがあと数時間の命で、救うためには逆行が必要であると聞き、名もなき男はキャットを逆行させ、1週間前のオスロの回転ドアへ向かうことを決めます。, 26:名もなき男、キャット、ニールは、アイブスらとともに回転ドアを通って逆行時間に入ります。, 24:名もなき男(逆行)はニールに、キャットを救い過去を変えるため外に出ると告げます。, 19:名もなき男(逆行)は外に出て、停めてあったSAABに乗り、その時に後部座席を覗き込んでそこにアルゴリズムがあるのを確認します。, 18:名もなき男(逆行)は逆方向の抵抗や摩擦に苦しみながら、SAABを走らせます。, セイター(逆行)の、「ケースは空だ。爆心地に残りのアルゴリズムを集めろ」という通信を、名もなき男(逆行)は聞きます。, 10:SAABは高速道路を逆行していき、ベンツからセイター(逆行)と逆行ドライバーがアウディに乗り移っているところに追いつきます。, 9:SAABはBMWとアウディの間に入ります。名もなき男(逆行)は、アウディのセイター(逆行)からBMWの名もなき男(順行)にケースが渡され、SAABの後部座席にあったアルゴリズムがBMWの名もなき男(順行)の手に戻るのを見ます。, 6〜4:名もなき男(逆行)はひっくり返ったSAABの中にいて、身動きがとれません。, 3:アウディが停まって、セイター(逆行)が降り、「連携プレーか。無駄に妻を撃った」と言います。セイター(逆行)は漏れたガソリンに火をつけ、アウディで走り去ります。, 23:回転ドアを出たセイター(逆行)は、窓の向こうに回転ドアから後ろ向きに出てくるセイター(順行)を見ます。青い部屋では、キャットが撃たれた傷で苦しんでいます。, 22:青い部屋のセイター(逆行)は、赤い部屋でアイブスの部隊が後ろ向きに去っていくのを見ます。, 21:赤い部屋の名もなき男が「もう言った」と言い、セイター(順行)が問い詰め、部屋を出て行きます。, 20:セイター(逆行)は、名もなき男が「BMWのグローブボックスだ」と言うのを聞きます。, 19:セイター(逆行)は、「次は頭だ」と言ってから、キャットの腹を撃ちます。すると、キャットの傷は直ります。それから「1、2、3」とカウントアップします。, 18:セイター(逆行)は、キャットに銃を突きつけ、「ケースはBMWか?」と名もなき男を問いただします。, 17〜16:セイター(逆行)は、マスクをつけ、青い部屋からマスクをつけたキャットを連れ出します。, 14:セイター(逆行)はベンツで銃撃戦の現場に到着し、グローブボックスを探してそこに何もないことを知ります。, 11:ベンツの中で、セイター(逆行)は「ケースは空だ。爆心地に残りのアルゴリズムを集めろ」という通信を部下に送ります。, 10:セイター(逆行)と逆行ドライバーは、ベンツからキャットの乗っているアウディに乗り移ります。, 9:アウディに乗ったセイター(逆行)は、BMWの名もなき男にケースを投げ渡します。, そのとき、セイター(逆行)はSAABに乗っているのが名もなき男(逆行)であること、SAABからBMWにプルトニウムが飛び込んだことに気づきます。, 8:セイター(逆行)のアウディ、SAAB、名もなき男とニールのBMWが並走します。, 6:セイター(逆行)はキャットに銃を突きつけて、1、2、3とカウントアップします。, 5:セイター(逆行)とキャットの乗ったアウディは、後ろ向きに走るBMWの前を走ります。, 3:横転したSAABの前でアウディは停まり、セイター(逆行)は降りて、漏れたガソリンに火をつけてSAABを爆破し、またアウディに乗って立ち去ります。, 3':セイター(逆行)は無線で、アルゴリズムはSAABにあると伝えます。それが、名もなき男とニールが聞いた「逆回転の無線」の正体です。, 0〜2:セイターはキャットを虐待した後、赤い部屋に入って閉じこもり、「逐一報告しろ」と部下に伝えます。, 3:セイター(逆行)からの通信で、セイターはアルゴリズムがSAABにあることを知ります。, 4〜19:セイターはフリーポートの外で待機します。やがて、SAABが後ろ向きに走って来て停まり、名もなき男(逆行)が降りて、フリーポートの中へ戻って行きます。, 21:セイターは赤い部屋に戻り、縛られている名もなき男(順行)に「どっちだ、早く言え」と迫ります。名もなき男は「もう言った」と答えます。, というわけで、これでだいたい辻褄は合ったと思うのですが…どうでしょう。あらためて順を追って検証していきます。, カーチェイスのスタート時点である3で、BMWに乗った名もなき男とニールは、逆回転の通信を聞きます。, これは、セイター(逆行)が仲間に通信している声ということですね。セイターは逆行の声を同時逆再生する技術を持っているので、順行のセイターもこの通信を聞くことができます。, 順行視点のスタート地点(1〜3)は、セイター(逆行)にとってはゴール地点です。ちょうど、セイター(逆行)が名もなき男(逆行)の横転したSAABを爆破した時点です。, 4で、前方からアウディが後ろ向きに向かって来ます。これは逆行しているので、乗っているセイター(逆行)の主観的には、BMWから遠ざかっていくところになります。, アウディのドライバーとセイターは逆行しているので、彼らの主観的には前に向かって走っているわけですが、同じ車に乗っているキャットは順行のままなので、キャットにとってアウディは高速道路を後ろ向きに猛スピードで走っていることになります。, 6でアウディのセイター(逆行)が顔を見せ、指でカウントダウンしてキャットを撃つぞと脅します。言葉は逆回転になってしまって通じないので、指で示しています。, セイターは逆行での振る舞いに慣れているので、1、2、3とカウントアップして、相手にはカウントダウンしているように見せています。後の尋問シーンでも、セイターは複雑な逆向きの尋問をこなしています。, これはセイターが逆行に慣れているからこそなんだけど、観ている者にとってはかえって混乱のもとにもなってますね。, 8〜9で、BMW、SAAB、アウディが3台横並びになり、名もなき男はプルトニウムのケースをアウディに投げて渡します。, このとき、名もなき男はこっそり、ケースの中身であるアルゴリズムを、隣のSAABの中に投げ込んでいます。, これが、アルゴリズムの行方を追う上でもっとも重要な動きなんだけど、順行の時にはその動きはほぼ見えません。逆行の時には、カメラはSAABの中にあるので、SAABの後部座席にあったアルゴリズムがBMWに戻っていく様子が(一瞬だけ! Copyright © CyberAgent, Inc. All Rights Reserved. とにかく、矛盾を回避しようとするなら、名もなき男が傷に気づくなんていう「別になくてもいいシーン」は別になくてもいいんだし、これをわざわざ入れてるのには、ノーランのなんらかの意図があるんだろうと思います。, コンテナを積んだトラックはオスロ空港に到着し、日時はちょうど出発の1週間前、建物につっこんだボーイング747が炎上し、消火活動が始まってる真っ最中。, 名もなき男は黒い防護服に身を包み、「俺が先に行って敵がいたら排除する」とか言って出かけて行きます。, そして、前半の「順行vs逆行の格闘シーン」を、あらためて逆行視点で繰り返すことになります。ここは「ネタバレ解説3」で解説したし、仕組みをわかってみればそんなに難しいシーンではないですね。, このタイミングのこの場所に来て、あの服装を身につけて、どうして名もなき男は「あ、あれ俺だった」って気づかないのでしょうか?, ていうか、敵をどうこういう前に、このタイミングで中に入ったら「自分とニールがいる」ことはわかってるはずだし、それに対して何の対策もとらないまま、スタスタと入っていって格闘になってしまう…というのはまるで意味がわかりません。, 1つ。名もなき男は、当然すべてを予想していて、この流れだと自分と格闘することになると予想していた。, しかし、時間のつじつまを破壊してしまうことを恐れ、あえて記憶の中の「黒服の男」と同じ行動をとることにした。, 時間のループを完成させるために、あえてSAABで現場に戻ったのと同様ですね。わかっていて、つじつまを合わせるように行動した…という説。, 2つめに、なんらかの「時間の不思議な影響力」が働いて、名もなき男に時間的つじつまの合った行動をとらせるために、過去の記憶が一時的に消されていた、という説。, 「過去にタイムスリップしても、なぜかふしぎと邪魔が入って、祖父や自分は殺せない」みたいなルールと、似たものではありますね。自由意志は否定され、人はあらかじめ歴史に定められた通りの行動を自動的にとっている(自分では気づかずに)ということになります。, 3つめ。本当にうっかりしていて、「黒服の男」のことはすっかりど忘れしていた…という説。, 後で名もなき男はニールに「もう一人の俺のことをなぜ黙ってた」と言いますが、いやその前に自分で気付こうよ、というシチュエーションじゃないですかね。, ニールは外で待機していて、名もなき男が脱出してくるのを待ってから、キャットの担架を押して中に入ります。, 順行の時、ニールは黒服の男のマスクを取って、それが名もなき男だったことに気づいていたので、ここで何が起きるかは知っていました。でも、彼は黙っていた。, ニールが黙っていなくても、名もなき男は気づいてしかるべき…だったように思いますが。, ニールとキャットは逆行状態で外で待っていたので、ニールが中に入ったのは格闘が発生するより前。二人の名もなき男が回転ドアで出くわすよりも前の時間だった、ということになります。, 順行の時、回転ドアに近づいた名もなき男とニールは、「誰かがいる」という気配を感じていました。それは、その直前にここに入って脱出したであろう逆行ニールとキャットの気配だったのかも。, ニールが従う、テネットの方針はいくつかあって、その一つが「起きたことは仕方がない」です。, 過去を変えたとしても、その結果は知り得ない。だから、過去を変えようとしても意味はない。ということがその方針には含まれています。, これは、上のパラレルワールド仮説ですね。逆行して過去に干渉して起こることを変えてしまったとしても、それはそのようなパラレルワールドが分岐するだけで、本来の出来事が消えてしまうわけではない。, しかしそうなると、未来の名もなき男がニールを過去に送ったりして、過去に干渉しているのは何なのか…ということになりますね。, これは、セイターがアルゴリズムを集めて世界を滅ぼすという過去を変えようとしているのではないのか。, でも考えてみれば、セイターがアルゴリズムを集めて世界を滅ぼした世界線というものは、存在しないわけです。そんなものが存在したとしても、「全生命は一瞬で消滅する」ので誰も知り得ないわけですが。, 世界が滅んだ世界線がその性質上存在し得ないとしたら、あり得るすべての世界線は「セイターの野望が阻止され、世界滅亡が回避された世界線」です。, 世界滅亡が回避された事実を補強するために、過去に干渉しているのである…と言えます。, 「世界は滅びなかった」という過去は確定しているのだから、であれば何もしなくていい…ってなりそうなもんですけどね。, しかし、その「滅びなかった」過去は、テネットの行動の結果として…名もなき男のわけもわからないままの行動や、キャットを守ったことや、ニールの犠牲や、アイブスやホイーラーらの戦闘や、そういったなんやかやの行動の結果として、ある。, それは実は、ほんのちょっと、ギリギリの差で、滅亡に転じていたかもしれない、ギリギリの勝利だったのかもしれない。どの程度の努力の不足で、過去が確定しないのかは分からない。, 分からない以上、できる限りの努力をして、命がけで過去に介入して、必死に行動しなければならない…ということになります。未来の名もなき男がやっているのは、そういうミッションであるのでしょう。, 順行の時に、名もなき男はオスロの「2日後」に、ムンバイでプリヤと会って話していたようです。そこでプリヤは、「プルトニウム241を餌にしてセイターに近づけ」と名もなき男に指示していました。, その結果としてアルゴリズムがセイターに奪われたと考えた名もなき男は、プリヤに「アルゴリズムを渡さないよう、指示を変更する」ことを求めます。これも、過去を変えようとする試みですね。, それは、未来のある科学者によって作られた、世界にただ1つのもの。作った科学者は自殺した。, マンハッタン計画のオッペンハイマー博士のように、その発明によって未来人も滅びることを科学者は予知し、その重圧に耐えられなかった。, ロバート・オッペンハイマーはアメリカの物理学者。ロスアラモス国立研究所の初代所長としてマンハッタン計画を主導し、原子爆弾開発プロジェクトの指導者となりました。彼は世界初の核実験「トリニティ実験」を成功させ、完成した原爆は広島・長崎に投下されることになります。, オッペンハイマーは原爆を「強力すぎて使うことのできない兵器」と考えていたようですが、それが実際に使われたことを知って絶望したと言われます。, プリヤにとって(順行の)名もなき男と会ってアドバイスするのは過去ではなく未来なので、これからプリヤがどう行動するかは、いくらでも変更できそうに思えます。自由意志が存在するのであれば。, しかし、この世界には「未来からやって来た名もなき男」がいて、そこからもたらされた情報によって行動を変えるなら、それは「過去を変える」に当たるのかもしれません。, もしプリヤの指示が変わったことによって、セイターがアルゴリズムを入手しないことになるのであれば、その時点で世界は分岐し、「セイターがアルゴリズムを手に入れた結果、名もなき男が逆行して来てプリヤに会った」世界線はそれとは切り離されることになります。, 逆行して来た名もなき男も、彼と干渉したプリヤも、「セイターがプルトニウムを手に入れた世界」に属しているのであって、分岐した世界のことは知り得ない。, しかし、どちらにしても、プリヤはアルゴリズムをセイターに渡すことを最初から意図していたので、それを変更するつもりはありませんでした。, セイターがアルゴリズムを手に入れることを、プリヤは「9つが揃うチャンス」という言い方をしています。, これではまるでプリヤは現代人を滅ぼしたい未来人の側に立っているかのようですが、その他の言動や行動からも、プリヤはあくまでも未来人に対抗し、現代人を守る立場であるようです。, プリヤの考えとしては、アルゴリズムの場所が不明で、9つがバラバラのまま世界に散らばっている状況は、できれば避けたい、というのがあるのでしょう。, その場合、セイター以外のより厄介な敵がアルゴリズムを手に入れる可能性があり、リスクが拡散してしまうからです。, それよりは、国家の後ろ盾などを持たない個人であるセイターが、9つを集めてしまう方がむしろ御しやすいとプリヤは考えた。, それでは、アルゴリズム発動の危機がある…わけですが、しかし最終的には滅亡が起こらないことは既に確定しているわけです。プリヤたちが生きている世界が今も存在し、未来からの指令も届くという事実を証拠として。, 名もなき男はアルゴリズムをセイターに(わざとらしくなく、自然に)渡す役割として、プリヤの計画の中に位置付けられた存在だった。それが「あなたは主役の一人」という発言ですね。, 名もなき男は「アルゴリズムをいつどこで組み立てる?」と尋ねて、それを知っていることをプリヤに匂わせます。, プリヤはこの時点では、アルゴリズムが14日のスタルスク12で組み立てられることは知らないようです。, それは奇妙なことに思えます。この日は、既に14日から2週間以上経っている日です。スタルスク12の戦闘に参加した誰か(例えばホイーラー)に聞けば、日にちも場所も簡単にわかるはずです。戦闘に参加したのはプリヤの部下なのだから、報告を受けていないことがむしろ不自然なくらいです。, しかし、もしプリヤがホイーラーから日にちと場所を聞いたら、それはループ状況になってしまいます。, ホイーラーから聞いた情報に基づいて、プリヤが部下に目標とする日にちと場所を伝え、ホイーラーはその指示に従って行動する。, そうなると、じゃあそもそもその日にちと場所はどこから来たの?ということになってしまいます。, ドラえもんの「あやうし!ライオン仮面」で、漫画「ライオン仮面」の続きが気になるドラえもんがタイムマシンで来週に行って、次の回が載った雑誌を買ってくる。締め切りに追い詰められた漫画家は寝込んでしまって、ドラえもんは代わりにその雑誌を見て、次回の「ライオン仮面」を書き写す。, じゃあ、次回の「ライオン仮面」を考えたのはいったい誰?という…。見事なタイムパラドックス漫画です。, この状況はもうこれだけでパラドックスだから、時空を不安定にする不安要因と言えるのではないでしょうか。, 「ライオン仮面状況」を避けるために、プリヤはあえて何も知ろうとはしない。それが「無知は私たちの武器」ということなのかなと思います。, 何らかの外部のファクターから、場所と日にちがもたらされることを、プリヤは待っていた。それが名もなき男である可能性に気づいて、プリヤは彼を「トロンヘイム沖の部隊」に合流させることを認め、キャットを殺さないという条件も認めることになりました。, わざわざプリヤを呼び出して、名もなき男が真っ先に言ったのは、「キャサリンは死にかけた。あんたのせいだ」ということでした。, 確かに、セイターに近づくためにキャットを利用することを示唆したのは、元はと言えばプリヤでした。クロズビー卿を介して、でしたが。, セイターは名もなき男を脅迫するのに、キャットを殺すと脅すのですが、これは考えてみれば妙な話です。, だって、キャットはセイターの妻ですからね。名もなき男とは、別に何の関係もない他人です。, 無関係な相手を脅すために、自分の妻を殺すと迫る…って、変な話です。でも、その脅迫は効いちゃうので、セイターの読みは確かだったんだけど。, キャットがセーリング中にセイターを海に突き落とした後、名もなき男はセイターに「奥さんを許してくれ」と頼んでいたので、このあたりから既に名もなき男の弱みは明確だったと言えます。, プロのエージェントとしては、あるまじき甘さであるようにも思えますね。プロならあらゆる関係者は利用して切り捨てる覚悟があるはず。, タリンの回転ドアで、名もなき男はキャットが撃たれてもアルゴリズムのありかは嘘を伝え、「彼女は仕方がない」というような発言もしています。それでも、その後すぐにキャットを救うための逆行に入っているので、冷酷さはあくまでもうわべだけのものであるようです。, これが、名もなき男のキャットへの恋愛感情なのかというと、それもどうも違うような気がするんですよね。, この映画からは、どうにも恋愛要素を感じない…。(単に、ノーランが恋愛を描くのが下手なだけかもしれないけど), 名もなき男から一貫して感じるのは、「無関係な人を巻き込んで犠牲にすることを良しとしない」というプロ意識です。, キエフのオペラハウスでは、名もなき男は一切迷わず、無関係な観客を巻き込む証拠隠滅の爆弾を撤去するために走りました。, CIAエージェントとしての、それが名もなき男の第1の主義、信条(テネット)だった…ということですね。だから、どんなに不利になっても、味方の方針と対立しても、名もなき男はキャットを生かすことにこだわり続けるのだと思います。, 「TENET テネット」ネタバレ解説7 タリンからオスロへ。アルゴリズムの謎、プリヤの立場 | MOJIの映画レビュー, 実は既にアルゴリズムが作動していて、全人類が消滅したパラレルワールドが生じていたとしても、消滅しなかった世界にいる我々は知り得ない, アルゴリズムの場所が不明で、9つがバラバラのまま世界に散らばっている状況は、できれば避けたい, プリヤはこの時点では、アルゴリズムが14日のスタルスク12で組み立てられることは知らない, スタルスク12の戦闘に参加した誰か(例えばホイーラー)に聞けば、日にちも場所も簡単にわかるはず, 『「TENET テネット」 ネタバレ解説1 基本的な背景の解説と、オペラハウスの全容』, 「TENET テネット」、2回目観ると1回目とはまた全然違った面白さがありますね。意味がわかる! 今なにやってるかがわかる!順行で意味不明だったことが、逆行で…, 『「TENET テネット」ネタバレ解説2 逆行する銃弾の謎、バーバラの研究所、ニールの謎』, 「TENET テネット」のネタバレ解説記事です。自己解釈なので、公式な解釈とは異なっている場合があります。最後まで完全にネタバレになります。ご了承ください。こ…, 『「TENET テネット」ネタバレ解説3 プリヤとは何者か、オスロのフリーポートの解読』, 『「TENET テネット」ネタバレ解説4 セイター登場、セーリング、金塊の謎、そしてタリンへ』, 『「TENET テネット」ネタバレ解説5 難解な逆行カーチェイスを徹底的に詳細解説!』, この記事は、「TENET テネット ネタバレ解説1」「TENET テネット ネタバレ解説2」「TENET テネット ネタバレ解説3」「TENET テネット ネ…, 『「TENET テネット」ネタバレ解説6 逆行弾による傷の問題、キャットの負傷の問題、爆発凍結の謎』, 『「TENET テネット」ネタバレ解説8 「記録」とは何か。10分間の挟撃作戦、ニールの行動の図解』.