野木亜紀子 長編小説だけに、文庫本で500ページ以上にも及ぶ原作をいかにして2時間強の映画に仕上げるかという難しさもあった。 ... インタビュー;

源さんは、志摩を演じる以前の源さんって感じでしたね。実際に、撮影のタイミングも『MIU404』の前でしたが、どちらかというと平匡さん寄りな部分がありました。出来上がりを見て、やっぱり普通に生きている人を演じるのがうまいなと思いました。実際の本人はポップスターなわけで、大きなステージで「星野源でーす!」と言ってる人なんだけど、どう見ても素朴に地道に生きているテーラーに見えたし、そういう普通の人が巻き込まれていく様子をうまく演じられていたなと。, ――対して、新聞記者の阿久津英士を演じた小栗旬さんはいかがでしたか?野木さんの作品は初めてということですね。, 阿久津は狂言回し的な役割なんですけど、それだけでは主人公として機能しないので、なぜ社会部から文化部へ来たのかなどの理由を描いてます。実際観てみると、演技に過剰なところがなく、それでいてちゃんと存在感があるのが見事だなと思いました。存在感があるのに、さりげなくいる感じがあります。だけどクライマックスでは静かな熱が伝わる。, ――『MIU404』で機動捜査隊の一人の陣馬を演じた橋本じゅんさんも、続けて出演されているということで、公開前から期待が高まっていますね。, 小料理屋の板長を橋本さんにお願いしたと聞いて、「大丈夫? 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている情報も合わせてご確認ください。, 新作情報・編集部おすすめ映画はもちろん、イベントレポートやレビューも充実。海外発の驚きの映画ネタもいち早くお届け。, ご興味に合わせたメルマガを配信しております。企業IT、テクノロジー、PC/デジタル、ワーク&ライフ、エンタメ/ホビーの5種類を用意。. ’74年生まれ。’10年にフジテレビのヤングシナリオ大賞を受賞し、デビュー。’18年に放送された『獣になれない私たち』で第37回向田邦子賞受賞。ドラマは見るのも大好きで、テレビ業界にいる利点は「いつでもドラマの話ができること」と言うほど。, 「昨今のドラマ界を変えた」とも言われている脚本家の野木亜紀子さん。小説や漫画の原作もの、オリジナル脚本、どちらもメッセージ性がありながら、見終わってから温かい気持ちにさせてくれる作風が特徴です。, 「辛い中でも、どこか“温かさ”を残しています。それはテレビドラマだから。私は映画の専門学校出身で、卒業後はドキュメンタリー制作会社で働いていました。映画やドキュメンタリーは最後が残酷だったりモヤモヤしてもいいけれど、ドラマは違う。シリアスな題材を扱う場合も、見終わったときの気分は意識しています」, 「社会人になって、あんなに好きだった映画館に足を運ぶ余裕もなくなっちゃって。たまの休日は録画していたテレビドラマを朝から晩まで見るのが唯一の幸せ、みたいな時代が続いたんです。当時は1日12時間ぐらい見ていました(笑)」, 「今は“辛い話”が難しい時代なのかなと感じます。少し前までは、ひどい話のドラマっていっぱいありましたけどね(笑)。去年放送された『獣になれない私たち』は、ブラック上司のもとで働く女性が主人公だったのですが、“彼女が、かわいそうすぎるのでは”という意見も聞きました。私は、私のような視聴者の方の見る目や感覚を信じているし、時代に照らし合わせて今こうしたドラマも必要なんじゃないかと思って『獣になれない私たち』を書きました。誰にとってもわかりやすく、共感しやすいものばかりだと、想像力が必要ない、平均的なドラマばかりになってしまう。じゃあどうすればいいのかというと、結局自分のおもしろいと思うものを書いていくしかないんです」, 「脚本家を目指しながら派遣社員として働いていた時期も長くて、その間の経験も大きいと思います。世の中には、まあ本当にいろいろな人がいるわけです(笑)。はじめに入った映像業界は、できない人は置いていかれるような空気で、それが当たり前でした。でも派遣でいたある会社は、『どんな人でもどこかに受け入れる場所がないと。それが会社であり社会なんだ』と本気で語る部長がいるところで。上司が『怒る』人から『まかせる』人に変わって、できない人が仕事ができる人になっていくのも見ました。そんな経験が脚本にも生かされていると思います」, 「ドラマは絵空事だし、絵空事を楽しむものだとも思うんです。ただその中に、何か本当のところを作りたいとは努力してます。セリフでも、感情でも、なんでもいいんですけれども、“どこかで目に見えないリアルをつかみ取ろう”という気持ちで新作も執筆中です」, 「最近では『腐女子、うっかりゲイに告コクる。』を書いた三浦直之さん。原作はあるのですが、テレビドラマの中では珍しくゲイ・レズビアンをしっかり扱った作品で、素晴らしかったです」, 「偶然にも、今回の特集で取材されている『ドラマ24』の枠で書きました(笑)。古舘寛治さん、滝藤賢一さんのW主演で、監督は映画『リンダ リンダリンダ』などの山下敦弘さん。少し残念な兄弟と"苦"を味わうコメディで、ほぼ毎週ゲストも出るのでご期待ください」, 「不自然な死の原因を解明する架空の研究機関が舞台。法医学ものは死者の言葉を聞くというスタンスのドラマが多いのですが、今を生きる人のための未来志向のドラマにしたくて、『法医学は未来のための仕事』というセリフが生まれました。エンタメ作品なので、医療ものが苦手な方もぜひ」。DVD、配信で視聴可能。, 「テレビ局と航空自衛隊を扱ったお話で、有川浩さんの小説が原作です。普段は知ることのできない世界と、いろいろな人の働き方が覗けますし、甘酸っぱいラブも展開されます(笑)。今や個性派俳優として大活躍中のムロツヨシさんもご出演されてます」。DVD、配信で視聴可能。, 「これも原作は有川浩さんの小説です。放送は数年前ですが、"表現の自由"というあらためて考えたいテーマを扱った話。作品に出演している岡田准一さんの凛々しさ、榮倉奈々さんの可愛らしさ、そして今をときめく田中圭さんの姿も楽しめます」。DVDで視聴可能。, 「主人公はブラック上司のもとで働く女性ですが、"腹が立ったら怒ったっていい""疲れてるのに笑わなくたっていい"というメッセージも込めています。無理しないように。嫌だったら逃げて。ラクにいこうよ。というのを感じていただければ」。DVD、配信で視聴可能。, ファッション、ビューティ、ライフスタイル、料理、インテリア…すぐに役立つ人気コンテンツを、雑誌LEEの最新号から毎日お届けします。, ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許可を得た コアなドラマ好きからも「今、おもしろい脚本と言えば!」と名前が挙がる野木さん。自身の作品や執筆の際に意識していることを聞きました! テレビドラマだから辛い中でも“温かさ”のあるものを 野木亜紀子 … 内閣官房、 『逃げ恥』のイメージも大きかった中で、誰が演じたらすんなり見られるのだろうと思って。実際見てみて、市川さんの「すんなり力」が発揮されていたし、自然でリアリティのある芝居が本当にうまいなと思いました。, ――ほかにも、『アンナチュラル』所長の松重さんと、『コタキ兄弟と四苦八苦』の古舘さんが、同じ新聞社の記者でしたね。, この2人も、キャスティングされてから知って、特に松重さんは福岡出身なので「関西弁大変じゃない?」なんて言ってたんですが、さすがお見事でしたね。, 意義の問答ですかね? 正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 俳優の小栗旬と星野源が映画初共演することで話題を呼んでいる、映画『罪の声』(公開中)。塩田武士氏の同名小説の実写化作である同作は、日本中を震撼させた未解決事件を追う新聞記者の阿久津英士(小栗)と、父の遺品の中にあるカセットテープを発見し、その事件の脅迫テープに幼いころの自分の声が使われていたことを知った曽根俊也(星野)の人生が交錯していく。, 脚本を務めたのは、数々のヒット作を世に出す野木亜紀子で、本作には『逃げるは恥だが役に立つ』や『MIU404』の星野源、『アンナチュラル』の市川実日子、松重豊、尾上寛之、『コタキ兄弟と四苦八苦』の古舘寛治、『MIU404』の橋本じゅんと、過去の野木作品で魅力を放った役者陣が数多く出演している。今回は野木にインタビューし、完成した映画で彼らをどんな風に見たのか、話を聞いた。また、脚本を書くときに共通する矜持などについて語ったインタビューも後日公開する。, この話を受けたときは、監督が土井裕泰さん(『空飛ぶ広報室』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』を演出)だという座組を聞いたのと、面白そうな企画だなということでお受けしました。主演2人はすでに決まっていましたし、他のキャスティングにも口は出してないんです。たまたまご縁のある方が多かっただけで。どなたも素晴らしい役者さんなので、引っ張りだこというだけなんじゃないでしょうか。. やりすぎない?」なんて冗談で言っていて。あがりを見たら、すごく良かったですよね。あの役って「うかつ」な役じゃないですか(笑)。そういう「うかつ」な役を、うかつに演じていて面白かったですね。妙な説得力がありました。, ――シリアスな場面の多い映画の中で、くすっとできるのが橋本さんのシーンでしたよね。『罪の声』は、キャスティングにほとんど口出ししてないとのことですが、本当に野木さんの作品で活躍してた人が演技しているのがうれしくて。, 市川さんもそうですもんね。市川さんに関しては、「誰がいいと思う?」と意見を求められて私が推した気がします。やっぱり、今、星野源さんの妻の役って難しくないですか? 「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」「MIU404」など、大人気テレビドラマの脚本を次々と手掛けている野木亜紀子。近年はオリジナル脚本を手掛けることが多いが、脚本家として頭角を現したのは、有川浩の小説を元にした映画『図書館戦争』シリーズやドラマ「空飛ぶ広報室」などの原作ものだった。そして、脚本を執筆した最新作『罪の声』(10月30日公開)も、塩田武士によるベストセラー小説の映画化作品だ。いま最も注目される脚本家の一人である野木が、原作ものを手掛ける際に大事にしていることや、本作での苦労を明かした。, 映画『罪の声』は、約35年前に日本中を震撼させた実在の未解決事件をモチーフにした同名小説に基づき、フィクションとして事件の真相に迫っていくミステリー。複数の食品会社を標的に企業脅迫事件が連続発生。犯人から警察やマスコミを挑発する挑戦状が送られ、連日世間を賑わせた。しかし、犯人は忽然と姿を消し、事件は未解決のまま時効が成立した。物語は事件発生から35年後、小栗旬演じる未解決事件を追う新聞記者・阿久津と、幼少期に自身の声が事件に使われていたことに気付いてしまったテーラー店店主・曽根(星野源)の二人を中心に展開する。, 原作ものの脚本を手掛ける時の心構えとして野木は、「人様の子供を預かるような気持ち」「原作者の意図を掬いつつ、映像作品として独立させ、原作を読んでいない人にも理解できる」ことなどを挙げている。さらに『罪の声』では、原作が実際に起きた事件をモチーフにしていることから「実在の事件をモチーフにする場合、確定している事実については、過剰な色付けをしてはいけない」という難しさがあった。「被害者の方が実在している以上、やってはいけないし、不誠実なものは作れないと思うんです。そこに対しての配慮というのは、非常に気を遣ったので大変でしたね」, 野木脚本の魅力の一つに、エンターテインメント作品の中に社会問題を織り交ぜる上手さがある。しかし、そこには実在の事件を基にするのと同じ難しさがあるそうで、「社会問題を扱う作品って、全方位に気を遣うんです。やっぱり実際に関わっている人がいるわけですから。それは、例えばオリジナルドラマの『MIU404』でもそう。実際にある状況や事件をヒントにしたとしても、そこからだいぶ引き離した設定にして、そのものにはならないようにしています」という。, そんな難しさがあっても、社会問題を描くことは野木にとって「自然とそうなっちゃうというところがありますよね。特に『罪の声』『MIU404』のような事件ものというのは、やっぱり社会と無縁ではなく、社会状況があって事件が起こるわけなので」と特別な意識を持っているわけではないようだ。それだけに「海外では社会問題を扱っていない作品を探す方が難しい気がするけど、日本は無臭を目指しているようなところがありますよね」との疑問も口にする。, 野木は常にそういう環境の中で闘ってきたと思われるが、「どこまで伝わるかという問題はありますが、あからさまにはしないような描き方もある。例えばアニメーション映画の『ズートピア』は、人種差別などさまざまな問題が入っているけど、それに気付かないで単純なエンタメ作品として見ている方も多い。そのステルスな感じは、目指しているところでもありますね(笑)」と明るく前向きだ。, 長編小説だけに、文庫本で500ページ以上にも及ぶ原作をいかにして2時間強の映画に仕上げるかという難しさもあった。それは、原作のどこを活かし、どこを削るのかという問題に、実際の事件や事実をモチーフにしている部分は変えられないという事情が絡んでいたためだ。野木、土井裕泰監督、那須田淳プロデューサーと渡辺信也プロデューサーの4人は、夕方から朝まで続くような長時間の脚本打合せを何度も行ったが、「怖かったのは、朝までかかっても何の結論も出なかった時(笑)。一生書き終わらないんじゃないかと思うような時もありました」とかなりの困難を極めたことを明かす。「それぞれ大事だと思う箇所が違うけど、それをすべて残していたら何時間あってもおさまらない。脚本担当としてはフィクション部分をショートカットしつつも、そのぶん原作に沿った何か違うエピソードや発想で繋いでいかなければいけない。予算と時間を含め、物理的にどれだけ描けるのかということの攻防と検証みたいな話し合いをしていると、あっという間に12時間経っていて(笑)」, そうして完成した映画は、原作から大きく削ったような部分をあまり感じさせず、むしろ膨らませた箇所も多い。そこにも原作ものを手掛ける際に大事にしていることがあり、「映画オリジナルの描写を加えたり、膨らませるにしても、やっぱり原作に全くないものはダメだと思う。でも、原作にあるものをピックアップして拡大するのなら、それは原作者の思いの一部だと思うので、作品を壊すことにはならないと思うんです」という。, 今年は既に「コタキ兄弟と四苦八苦」「MIU404」という、2本のオリジナル脚本の連ドラが放送済み。来年もテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の続編SPや初のアニメーション脚本を手掛けた映画『犬王』などが控えている。2010年の脚本家デビュー以降、近年は特にハイペースで映画やドラマの脚本を手掛けてきた。この取材前日も「逃げるは恥だが役に立つSP」の脚本原稿を入稿したばかりだったそうで、「本当にヤバいくらい休みがないまま、ここまで来てしまったので、そろそろ休まないとこれはダメだなと(笑)。ちょっと調整しながら頑張りたいと思っています」と売れっ子ならではの苦労も漏らしていた。(取材・文:天本伸一郎).

1974年生まれ、東京都出身。主な作品に映画『図書館戦争』シリーズ(13・15年)、『アイアムアヒーロー』(16年)、ドラマ『空飛ぶ広報室』(13年)、『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)、オリジナル作品にドラマ『アンナチュラル』『獣になれない私たち』『フェイクニュース』(18年)、『コタキ兄弟と四苦八苦』(20年)、『MIU404』(20年)など。, ※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、